【獣医師監修】パピヨンの抜け毛がひどい原因は?今日からできる対策や病気のサインも解説

「パピヨンはシングルコートだから、抜け毛は少ないはず」。
そんな風に聞いていたのに、実際に一緒に暮らしてみると、床や服に愛犬の毛が…。
「話が違うかも?」「うちの子だけ抜け毛がひどいのかな?」なんて、少し不安に思っていませんか。

その気持ち、すごくよく分かります。
この記事では、あなたの悩みを解決するために、以下のポイントを解説していきます。
- パピヨンの抜け毛が「ひどい」と感じる本当の理由
- 今日からすぐに実践できる抜け毛対策のすべて
- 見逃したくない病気のサインやアレルギーとの関係
これを読めば、パピヨンの抜け毛に関する正しい知識が身につき、愛犬との毎日がもっと快適で楽しいものになるはずです。
それでは、一緒に見ていきましょう。

かどのペットクリニック院長
(横浜市青葉区さつきが丘6-11)
獣医師として自身の動物病院に勤める傍ら、家庭ではダックスフントたちやパピヨン、プーリーたちと生活しています。
獣医師目線でだけでなく、飼い主目線にもなりながら、有意義な情報発信ができたら幸いです。
よろしくお願いいたします!
【経歴】
麻布大学獣医学部卒。横浜市内動物病院、川崎市内動物病院、電話相談動物病院アニクリ24にて勤務。三児の母。
パピヨンの抜け毛は少ないって本当?その真相に迫ります!

まず最初に、一番気になるところからお話ししますね。
パピヨンの抜け毛に関する基本的な知識と、飼い主さんが「おや?」と感じる疑問の核心に迫っていきましょう。
これからお話しするのは、この3つのポイントです。
- シングルコートなのに抜け毛が気になる理由
- 換毛期がないのに毛が抜ける時期について
- もしかして病気?注意したい抜け毛のサイン
これらのポイントを知るだけで、漠然とした不安が解消されて、具体的な対策へとスムーズに進むことができますね。

病気なのか原因がわからずに不安になることは多々ありますよね。
想像以上の抜け毛に戸惑う飼い主さんもいるかもしれません。
まずはパピヨンの抜け毛について知りましょう。
それでは早速、多くの飼い主さんが抱く根本的な疑問、「なぜシングルコートなのに抜けるの?」という謎から解き明かしていきましょうか。
シングルコートなのに抜け毛が「ひどい」と感じる本当の理由は?

パピヨンは、アンダーコート(下毛)がなく、オーバーコート(上毛)だけの「シングルコート」という被毛タイプです。
このため、ダブルコートの犬種のように、季節の変わり目にゴソッと毛が抜ける「換毛期」がない個体が多いとされています。
だから「パピヨンは抜け毛が少ない」と一般的に言われているんですね。

シングルコートという特徴から持たれるイメージともいえるでしょう。
しかし、あくまでもイメージで抜け毛の量も個体差があります。
でも、実際には「結構抜けるな」「抜け毛がすごい」と感じる飼い主さんは少なくないんです。
それは決して間違いではありません。
シングルコートでも、犬の毛には一本一本に寿命があって、古くなった毛が抜けて新しい毛が生える「ヘアサイクル」というものがあります。
つまり、換毛期がないだけで、一年を通して少しずつ毛は生え変わっているんです。

すべての被毛が異なるタイミングで抜けて生えるというサイクルを繰り返しているため、健康であれば全身および一か所が被毛が生えていないという状態になる可能性は低いです。
全身状態の悪化や皮膚コンディション悪化などでヘアサイクルが乱れると、大きなか所で脱毛が起こる場合もあります。
そして、パピヨンの毛は絹のように細くて長くて軽やかですよね。
その美しい被毛が、抜けたときに静電気などで舞いやすく、ソファやカーペット、飼い主さんの洋服にも付きやすいんです。
「一本一本が細くても、集まると意外と目立つ」ことが、パピヨンの抜け毛が「ひどい」とか「多い」と感じてしまう、一番の理由かもしれませんね。
また、パピヨンの中でも系統によってはダブルコートを持つタイプも存在するという説もあります。
その場合、シングルコートのタイプと比較すると抜け毛が多くなってしまう可能性も考えられます。
換毛期はないけど「抜け毛の時期」ってあるの?

先ほどお話ししたように、パピヨンには明確な換毛期はありません。
ですが、「なんだか最近、特に抜け毛が多い気がする…」と感じる時期があるかもしれませんね。
それは、気のせいではないんです。
例えば、気候が大きく変動する春や秋の季節の変わり目は、体が環境に適応しようとして、一時的に抜け毛が増えることがあります。
人間でも季節の変わり目に肌の調子が変わるのと、少し似ているかもしれません。

体調の変化によって免疫力の変化に伴い、皮膚コンディションも変化することで抜け毛の量が増えることもあります。
季節によって皮膚や被毛の変化があるため、状態に合わせてシャンプーの種類を変えるなどのケア方法を変えることでコンディションを維持することも可能です。
また、生活環境の変化やストレス、あるいは年齢を重ねることによっても、ホルモンバランスが変わり、抜け毛の量に変化が見られることもあります。
「特定の時期にだけすごく抜ける」というよりは、体調や環境のちょっとした変化のサインとして、抜け毛が増えることがある、と覚えておくと良いでしょう。

体調不良や全身状態の悪化などによって被毛が生え変わるサイクルが普段と変わることもあり、皮膚の見え方などによって抜け毛が増えたというように感じることもあります。
もし抜け毛の量に変化を感じたら、愛犬の様子を少し注意深く見てあげる良い機会かもしれませんね。
もしかして病気?見逃したくない危険な抜け毛のサイン!

ほとんどの抜け毛は自然な生え変わりによるものですが、中には注意が必要なケースも存在します。
「いつもより抜け毛が多いな」と感じたときに、合わせてチェックしてほしいポイントがいくつかあります。
例えば、皮膚に赤みやブツブツが見られたり、大量のフケが出ていたり。
あるいは、体をしきりに掻いたり、同じ場所を舐め続けたりしている様子はありませんか。

被毛が薄くなったと感じる際は、抜け毛だけでなく、掻く・舐める・噛むことによる切れ毛が原因なこともあります。
特定の部分だけ毛がごそっと抜けて、地肌が見えてしまっている「脱毛」の状態も要注意です。
これらは、アレルギー性皮膚炎や膿皮症といったかゆみを伴う皮膚炎のサインかもしれません。
さらには、甲状腺機能低下症やクッシング症候群のような内分泌系の病気が原因で起こる脱毛の可能性も考えられます。

かゆみが致命的なトラブルにつながる危険性は少ないですが、日常的なかゆみは犬にとって大きな負担となり得ます。
内分泌系の疾患も皮膚炎のようにかゆみなどの負担はないものの、皮膚以外の全身症状につながることもあるため、気づいたら早めの受診をおすすめします。
ただの抜け毛と軽く考えずに、こういったサインが見られたら、できるだけ早く動物病院で獣医師さんに相談してくださいね。
早期発見が、愛犬の健康を守る一番の近道ですから。
今日からできる!パピヨンの抜け毛対策完全ガイド!

さて、パピヨンの抜け毛の基本が分かったところで、いよいよ具体的な対策についてお話ししていきましょう。
正しいケアを知って実践すれば、抜け毛のお悩みはかなり軽減できるはずです。
ポイントは、毎日の生活の中に上手に取り入れていくことですね。
- 基本中の基本、正しいブラッシング方法
- 効果を最大化するシャンプーのコツ
- 体の内側からアプローチする食事ケア
- 見落としがちなストレスとの関係
- 洋服や掃除の工夫でさらに快適に
どれも難しいことではありません。

日常生活の中で、皮膚や被毛のことに目を向ける習慣を向けることで、日々の健康チェックにもつながります。
それでは、数ある対策の中でも最も基本で重要な「ブラッシング」から、その具体的なコツを詳しく見ていきましょう。
ブラッシングが基本!正しいやり方とブラシ選びのコツは?

パピヨンの抜け毛対策で、何よりも大切で効果的なのが毎日のブラッシングです。
ブラッシングは、抜け落ちる前に死毛を取り除いてくれるので、お部屋に舞う毛を減らすことができます。
さらに、血行を促進して健康な被毛の成長を助けたり、皮膚の異常を早く見つけたりするのにも役立つんです。
パピヨンの繊細な被毛には、まず「ピンブラシ」で全体を優しくとかし、毛のもつれをほぐしてあげるのがおすすめです。
ピンの先が丸くなっているものを選ぶと、皮膚を傷つけにくくて安心ですね。

ブラッシングの誤った方法が原因で皮膚トラブルにつながることもあるため、注意が必要です。
その後に「スリッカーブラシ」で抜け毛をしっかりと取り除き、被毛をふわっとさせて、最後に「コーム」で毛並みを整えて仕上げる、という流れが理想的です。
しかし、スリッカーブラシは力を入れすぎると皮膚を傷つけてしまうので、一般の家庭で使用することは難しいです。
家庭ではピンブラシやラバーブラシでとかして、抜け毛をしっかり抜いてもつれを減らすことを目標にしましょう。
特に、飾り毛が美しい耳の後ろや脇の下、内股などは毛が絡まりやすいポイントです。
毛玉になってしまうと皮膚が引っ張られて痛みを感じることもあるので、ここは特に丁寧に、優しくとかしてあげてくださいね。

家庭で毛玉の処理が難しそうであれば、トリミングサロンや動物病院などプロの力を借りましょう。
ブラッシングを嫌がる子には、おやつをあげながら少しずつ慣らしたり、静電気防止効果のあるブラッシングスプレーを使ったりするのも良い方法です。
シャンプーでごっそり!頻度と洗い方の注意点は?

シャンプーも、抜け毛をごっそりと洗い流せる有効な対策の一つです。
ただし、やりすぎは禁物なんです。
パピヨンの皮膚はデリケートなので、シャンプーをしすぎると必要な皮脂まで洗い流してしまい、かえって皮膚を乾燥させてしまう原因になります。
頻度としては、月に1回から2回程度を目安にするのが良いでしょう。
汚れが気にならなければ、もっと間隔をあけても問題ありません。

シャンプーの適切な頻度は個体によって異なります。
被毛や皮膚の汚れ具合や、犬の発するにおいなどをもとに頻度を調節してあげてくださいね
シャンプー前には、必ず全身をブラッシングして、毛のもつれやほこりを取っておくことが大切です。
こうすることで、シャンプーの泡立ちが良くなり、汚れも落ちやすくなります。

汚れがしっかり落とせると、ドライヤーでの乾燥時にも乾かしやすくなるなど、時間の短縮にもつながり負担が軽減できる可能性が高くなります。
シャンプー剤は、皮膚に優しい低刺激性のアミノ酸系などがおすすめですが、個々の皮膚の状態によって適したシャンプーは異なります。
セラミドやヒアルロン酸といった保湿成分が含まれていると、さらに良いかもしれませんね。
そして、すすぎは「もういいかな?」と思ってから、さらに念入りに行うのがコツです。
シャンプー剤が残っていると皮膚トラブルの原因になりますからね。
洗い終わったら、タオルで優しく水分を拭き取り、ドライヤーの温風で被毛の根元からしっかりと乾かしてあげましょう。

季節や皮膚の状態によっては乾燥のさせ過ぎは皮膚のコンディション悪化につながります。
保湿剤を合わせて使用したり、ブロワーと呼ばれる風力のみで水分を除去するアイテムを使用するなど乾燥方法も工夫してあげてください。
体の内側からケア!食事で見直すべきポイントは?

美しい被毛は、健康な体から作られます。
日々の食事内容を見直すことも、実はとても大切な抜け毛対策になるんです。
被毛の主成分はタンパク質なので、まずは質の良い動物性タンパク質が主原料となっているドッグフードを選んであげることが基本になります。
フードの成分表示を見て、具体的な肉類が一番最初に書かれているものを選ぶと良いですね。

アレルゲンとなりうる原料は個体によって様々です。
皮膚コンディションが悪化するような場合は、成分表示を見て、変更の際の参考にすると良いでしょう。
さらに、皮膚の健康をサポートしてくれる「オメガ3脂肪酸」や「オメガ6脂肪酸」といった必須脂肪酸がバランス良く含まれているフードもおすすめです。
これらの栄養素は、皮膚の潤いを保ち、健康な毛ヅヤを維持するのに役立ってくれます。
亜麻仁油や魚油などが含まれているフードを探してみるのも一つの手です。
加えて、皮膚のターンオーバーを正常に保つ「亜鉛」や、抗酸化作用のある「ビタミンE」なども、健康な被毛には欠かせない栄養素なんですね。

フードだけでなく、皮膚に良いサプリメントなども市販されているため、試してみることもおすすめです。
もしアレルギーが疑われる場合は、獣医師さんと相談の上、アレルゲンになりにくいタンパク質を使ったフードなどを試してみるのも良いでしょう。
その抜け毛、ストレスが原因かも?見落とせない心のケア!

意外と見落とされがちなのが、ストレスによる抜け毛です。
人間も、強いストレスを感じると円形脱毛症になることがありますよね。
犬もストレスが原因で体を過剰に舐めたりすることで抜け毛や切れ毛が増えることがあるんです。

皮膚炎や脱毛の原因が検査などによって検出されない場合、精神的なことが関連する皮膚トラブルが疑わしい場合もあります。
かかりつけの先生から精神的なことが関連していると指摘されたら生活環境の見直しなど負担の軽減も心がけましょう。
パピヨンはとても賢く、感受性が豊かな犬種と言われています。
個体差はありますが、中には飼い主さんの気持ちを敏感に察知したり、環境の変化にストレスを感じやすかったりする子もいます。
お留守番の時間が長かったり、運動不足だったり、家族間の雰囲気が悪かったり…ストレスの原因となり得ることは様々です。
対策としては、まず毎日のお散歩や遊びなどのスキンシップの時間をしっかりと確保するなどして、エネルギーを発散させてあげることが大切です。

飼い主さんとの距離が近すぎてストレスになる子もいます。
愛犬の性格を見ながら、ストレス対策を考えましょう。
知的な欲求を満たしてあげるノーズワークのような遊びも良いですね。
また、愛犬が安心して休める静かで快適な場所を用意してあげることも重要です。
もし抜け毛の増加とともに、食欲不振や下痢、体を頻繁に震わせるなどの行動変化が見られたら、それはストレスのサインかもしれません。
愛犬との接し方や生活環境を、一度見直してみる良い機会だと思います。
洋服や掃除の工夫でさらに快適に!

日々のケアと並行して、ちょっとした工夫で抜け毛との付き合い方を楽にすることもできます。
例えば、お部屋での抜け毛の飛散を防ぐために、愛犬に洋服を着せるという方法があります。
ただし、着せっぱなしは蒸れて皮膚トラブルの原因になることもあるので、素材選びやこまめな着替えを心がけてくださいね。

最近では皮膚を保護しトラブルを防ぐための洋服も販売されています。
目的に応じて探してみてください。
また、お部屋の掃除も重要です。
パピヨンの軽やかな毛は舞いやすいので、掃除機をかける前に、まずは霧吹きなどで床を少し湿らせると毛が舞い上がるのを防げる可能性があります。
カーペットやソファについた毛は、ゴム手袋をはめた手でこすると、驚くほどよく取れます。
粘着式のカーペットクリーナーと合わせて活用すると、さらに効果的です。
これらの工夫を取り入れて、抜け毛によるストレスを少しでも減らしていきましょう。
パピヨンの抜け毛とアレルギーの関係ってどうなの?

最後に、飼い主さんの中には「パピヨンの抜け毛は犬アレルギーに関係あるの?」と気にされている方もいるかもしれません。
この点についても、正しい知識を持っておくと安心ですよね。
パピヨンの抜け毛と犬アレルギーの真実!

実は、犬アレルギーの主な原因は、抜け毛そのものではないことが多いんです。
アレルギーを引き起こす原因物質であるアレルゲンは、主に犬のフケや唾液、尿などに含まれるタンパク質だと言われています。

シャンプーやブラッシングの頻度の低下により、ふけや抜け毛の量は増える可能性もあります。
これらのアレルゲンが、抜け毛に付着して空気中に飛散することで、アレルギー症状を引き起こすと考えられています。
パピヨンはシングルコートで抜け毛の量が比較的少ないため、アレルゲンが家の中に飛散しにくい犬種、としばしば言われます。
そのため、「犬アレルギーの人でも飼いやすい」という話を聞いたことがあるかもしれませんね。
しかし、アレルギーの原因は毛だけではないので、パピヨンだから絶対にアレルギー症状が出ない、というわけではない可能性が高いです。
もしご家族にアレルギーを持つ方がいる場合は、こまめな掃除機がけや空気清浄機の使用、そして定期的なブラッシングやシャンプーでフケをしっかり取り除いてあげることが、とても重要になるとされています。

飼い主さんの皮膚の状態は人間の皮膚科の先生に診ていただくことが必要です。
飼い主さんの皮膚でお困りの際はまずは皮膚科を受診していただくことをおすすめします。
正しい対策で、アレルギーのリスクを減らしながら、安心して一緒に暮らすことができたらいいですね。
まとめ

今回はパピヨンの抜け毛について、その原因から正しい対策まで詳しくお話ししてきました。
最後に大切なポイントを振り返ってみましょう。
- パピヨンの抜け毛は換毛期に限定したものではなく、日々のヘアサイクルによるもの。
- ブラッシングや食事管理など、日々の正しい抜け毛対策や健康な皮膚を維持することがとても重要。
- いつもの抜け毛と違う場合は、病気のサインかもしれないので要注意。
抜け毛は悩みかもしれませんが、愛犬の健康を知る大切なバロメーターでもあります。
この記事が、あなたと愛するパピヨンとの毎日を、より輝かせる一助となれば幸いです。